アイミ日記

ミシンのヒント8 よくある質問その2

今回もお客様からよく聞かれる質問にお答えいたします。

< 質問 >
簡単なミシンを探しています。初心者向けのミシンは?
< 答え >
ご来店いただくお客様から、本当によく聞かれる質問です。
結果からお答えします。
(ちょっと乱暴な言い方になりますが・・・)
簡単なミシンや、初心者向けのミシンはありません。
糸掛けなどの基本操作は、どのミシンを買ってもほとんど大差はありません。
(また、購入時に、お店の方に使い方を教えてもらえれば、けっして難しいものではありません。)

車に例えると分かりやすいと思います。
免許取ったばかりの方に向けて作られた車ってあるのでしょうか?
軽自動車も、高級車も、基本的な運転操作って、どれも共通ですよね?

確かに、カーナビや安全機構、運転サポート機能などの装備が充実していれば、簡単な車に近づくかも知れませんが、そんな装備が充実した車は、そこそこのお値段がすると思います。

それで、もし先ほどの質問を私が真に受けて、装備・機能が充実した「最高のミシン」をおすすめすると、
「え?! 10万円以上もするの? ・・・私は安いミシンでいいんだけど?」
と、きっと驚かれるはずです。

つまり、「操作が簡単・初心者向け」=「安いミシン」と勘違いされている方が多くいらっしゃるのです。

ちなみにミシンの価格が上がると何が違うかというと・・・
・ミシン本体の造りが頑丈になり(重くなり)、耐久性が増す。
・針の右側の作業スペース(ふところ)が広くなり、作業がしやすくなる。
・ミシンのパワーが上がる。
・スピードが上がる。
・縫心地(ぬいごこち)が良くなる。
 などの違いが出てきます。

ミシンの価格が下がれば、これの逆だと思っていただいて間違いありません。

また高めのミシンは他にも(機種によっては)、自動糸切ができる、文字が縫える、本格的な刺繍が縫える、押え圧が調整できる、針穴を直線専用に変えられる、ひざ上げレバーが使える、などの装備・機能が追加されます。

どのミシンも高価だった昔と違い、今はまさにピンからキリまであります。
まずは、ご予算をお店の方に伝えて、その中で用途にあったミシンをお選びください。

< 質問 >
糸は何を使ったらいいの?
< 答え >
家庭用ミシンなら、ずばりフジックスの「シャッペスパン」の60番です。
これは、どのメーカーさんも、ミシン屋さんも異論はないのではないでしょうか?

シャッペスパンは、高品質のポリエステルのスパン糸(短い繊維を撚って作った糸)です。
この糸を使うメリットは、その丈夫さと、糸の太さが均一でなめらかなので糸調子が狂いにくいところです。
ミシンのトラブルでも、糸をシャッペスパンに変えただけで解決することがよくあります。
値段は少し高いですが、それだけの価値はあります。

昔からある絹や、木綿の糸(カタン糸)をお使いの方も多いとは思いますが、これらの糸は、切れやすく、またとても滑りが悪いので糸調子不良の原因にもなります。
よく「木綿の生地なんだから、綿のカタン糸が一番でしょ? 化学繊維なんて合うの?」
とおっしゃる方がいらっしゃいますが、スパン糸はそもそも綿糸の風合いに似せて作られた糸なので、まったく問題なく馴染みます。
(光沢のある絹糸の代用にもなるの? という質問については別の機会にお話ししますのでここでは割愛します)

また、同じポリエステルでも低品質の糸も要注意!です。
安い糸は、毛羽だちがあったり、太さがふぞろいだったりして、これも不具合の原因になります。
100円ショップの糸は論外ですが、大手手芸店でワゴンに山積みされた「安い糸」などもご注意ください。

< 質問 >
針は何を使ったらいいの?
< 答え >
家庭用ミシンの場合は、迷わずオルガン製のHA×1をお使いください(ニット地ならHA×1SPを)。
100円ショップの針のような低品質の物はけっして使わないでください。

生地に対する番手(太さ)は、説明書などに書かれているので、それを参考にしていただくのがいいと思います。(一般的には普通地は11番ですが、JUKIさんの説明書などでは14番が勧められていますね)

また、針は消耗品なので、こまめに交換してください。
調子が悪ければ即交換!
調子が良くても、定期的に交換してください。

< 質問 >
ロックミシンはどんなミシンなの? 3本糸と4本糸の違いは?
< 答え >
よく知られているロックミシン(オーバーロック)には、1本針2本糸、1本針3本糸と、2本針4本糸があります。
いずれも、普通のミシンのような本縫い(直線縫い)はできません。 

まず、「1本針3本糸」とは、左側に直線状の地縫いが1本入り、その右側に輪っか状の上下のルーパー糸が生地端を包み込むように編まれていきます。
用途は、裁断した生地の端かがり(ほつれ止め)です。
他に、飾り縫いの一種である巻ロックなどもできます。
主な役割は「ほつれ止め」だけですから、このミシンだけでは作品は作れません。

そして次に、「2本針4糸」の場合は、3本糸に加え地縫いが1本増えます。
この2本に増えた地縫いのおかげで、縫い目に強度が増し、ニット地などの縫い合わせができるようになるのです。
また、端かがりと、縫い合わせが一度にできてしまいます。

ニット作品の中には、このミシンだけでも作れるものもあります。
しかし、例えばTシャツにポケットなどを付けようとすれば、本縫いのミシンも必要になりますし、既製品に近づけたいとなると、裾の始末などにカバーロックミシンという別のロックミシンが必要になったりします。

「2本針4本糸」の価格は当然「1本針3本糸」よりも高くなります。
「安い方がいいわ」と思われるかも知れませんが、
2本針は左側の針を1本を抜いてしまば、端かがり専用の1本針3本糸としてもお使いいただけるので、「わたしは今後もニット作品は絶対に作らない!」と決めている方でない限り、一台二役の「2本針4本糸」の方がお得です。

脱線しますが、たまに1枚だけの生地に、「2本針4本糸」で端かがりをされている方がいらっしゃいますが、(よっぽど何か理由があれば別ですが)糸も無駄で、仕上がりもよくなく意味がないのでお勧めしません。

そして最後に、「1本針2本糸」のロックミシンですが、このミシンの縫い目には正確な意味での地縫いが無く、針糸が地縫いと下の環縫い糸も兼ねています。
用途は、端かがりのみです(一部、巻ロックができる機械もあります)。
とても糸掛が簡単で、特に年配の方から根強い人気があります。

デメリットは、糸調子が一見、上下で逆に見えるため合わせづらいことと、
地縫いが無いため、繰り返し洗濯などをして糸が切れてしまったとき、そこから解けやすいことです。
この「1本針2糸」は今では需要があまりなく、数年前、ベビーロックさんも生産をやめてしまったので、今は確かJUKIさんからしか出てません。
価格が「1本針3本糸」とほとんど変わらないので仕方ないのかも知れません。

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