アイミ日記

ミシン修理レポート9 JUKI TL-90 上軸タイミングギヤ破損 

今回は、JUKIさんの初代ポータブル職業用ミシン、TL-90の修理です。
名前が表すとおり1990年発売のミシンなので、今ではモーターや基板類などの電装部品は、すべてメーカー供給切れとなっております。
しかし、まだまだ現役でお使いになっている方がたくさんいらっしゃいますね。
修理も、先ほどの電装部品の交換が必要なければ、しっかり対応できます。

症状をお聞きすると、はずみ車が逆には回るけど正回転(手前回し)には回らない、とのことでした。

さっそく分解して下軸周りを見てみると、糸切りカムが割れて他の部品に引っ掛かり、軸の回転を邪魔をしていました。
(写真では割れた片方が取れてしまってます)

これは、昔のTLシリーズでは比較的よくある故障です。
樹脂でできているカムが経年劣化で縮まり、亀裂が出来てしまうのです。
なにせ20~30年の時間が経過していますからね。
現行の機種では、おそらく改良してあるとは思いますが、、、。

糸切りカムの交換はそれ自体は難しくはありませんが、その後のタイミング合わせが少々手間がかり、失敗すると糸が切れなくなります。
また余談になりますが、現行のTL-30シリーズや、TL-25シリーズの場合は、糸切りカムに加えて他に2つのカムのタイミング合わせも必要になるので、さらに難易度が増します。

さっそくカムを交換し、タイミングを合わせようとはずみ車を回すと、
あれ?
何か引っかかります。
回転を邪魔している不良部品は替えたはずなのに、なんで?

原因を探ってみると、上軸の大きなタイミングギヤにヒビが入って割れていました。
このギヤはあまり破損することがないので、めずらしいケースかも知れません。

さらに調べてみると、なんと下軸のタイミングギヤからも同じように亀裂を発見してしまいました、、、。
こんなに故障箇所が多い修理も久しぶりです。

ここで、、、ちょっと心配になりました。
今回、修理自体もかなり手間がかかるので大変なのですが、
それより問題なのは、上下のタイミングギヤの交換部品があるかどうかです。
もしなければ修理は完遂できず、ここまでの作業がまったく無意味になってしまいます、、、。

恐る恐る、JUKIさんに問い合わせてみると案の定、下軸のギヤはあるが、上軸は廃番で在庫ゼロとのこと。
となると最後の頼みの綱は、弊社の地下倉庫にある中古ミシンだけです。
果たして合うものがあるかどうか、、、。

幸いなことに、使えるものが1つだけありました!

これが今回の修理で交換した不良部品です。
(中釜回転止めは不良ではないのですが、静音性のある新しい物と交換しました)

こんなに大きめの部品を3つも交換することは、めったにありません。
作業時間もけっこう掛かりました(汗)。 

最後にお掃除と、糸調子などもろもろ点検・調整して終了です。
苦労したので、お客様にはできるだけ長くお使いいただきたいです。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。
このブログでは、ミシンを使う上でのちょっとしたヒントや、ミシン修理レポート、お知らせ、雑記などを不定期で載せております。
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<ご注意> 
この記事は、「ミシンの修理をおすすめするもの」ではありません。
経験のない方がミシンを分解するのは、非常にリスクが伴います。
軽はずみな分解をおこなったために、その後、修理不能となるケースがありますので、ご注意ください。