アイミ日記

ミシン修理レポート7 ジャノメ JA3800 下糸を拾わない

今回、送られてきたのは、ジャノメさんのコンパクト電子ミシンJA3800です。
このミシン、小型とはいえ内部はしっかりと作られており、パワーもそこそこあります。
派手な機能こそありませんが、「取り敢えず一台は持っておきたい」というニーズにはピッタリかもしれません。

事前の不具合の説明では、「下糸がおかしい」とのことですが、なるほど下糸を引き上げようとしても、引き上がってきません。
針板をはずして、針とお釜のタイミングを見てみると、、、

本来ならば、針が一番下まで下がった後、ほんの少し上昇したところで(青矢印)、左回りに回る外釜の剣先(赤矢印)と出会わなければいけないのですが、、、、まったく届いてません。

針棒がずれたのか? それともお釜のギヤのネジが緩んだのか?
ここで単純に目先の針とお釜のタイミングだけを合わせようとすると、逆に正解から遠回りしてしまいます。
なので調整をする前に他も点検してみると、、、
送り歯と、針のタイミングも同じぐらいずれているのがわかりました。

これは、おもに針棒を動かす上軸と、お釜と送り歯を動かす下軸を同期させるタイミングベルトが、ずれてしまったのです。(上の写真は上軸のタイミングギヤです)

固すぎる生地を無理に縫おうとしたり、ミシンに何かのトラブルが起きたときに、おそらくベルトがギヤの山を乗り上げてしまいずれたのでしょう。
縫製時、針が生地にスムーズに刺さらず、ミシンがグググっと苦しそうに悲鳴を上げた場合は、それ以上は縫わない方が賢明です。

ベルトをいったん緩め、上下の軸のタイミングを合わせます。
外釜の剣先と、針が出会うようになりました。
両者の間隔も問題なさそうなので、これできれいに縫えるはずです。

お客様から指摘された不具合は、これで解消できたと思いますが、他の所も点検して行きます。

すぐ気がついたのは、てんびんの付け根、針棒クランクのところの糸がらみです。
縫い始めに針穴から糸が抜けてしまうと起きる定番のトラブルですが、強く糸が食い込むとミシンがまったく動かなくなることもありますので、あなどれません。
防止策は、ここをご覧ください

送り歯です。
ジャノメさんのミシンは薄地をきれいに縫うために比較的に歯の高さが低いのですが、、、これは低すぎます。
生地の進みが悪くなりそうな低さです。

よく見ると、かなり摩耗していますね。
長年に渡って、よくお使いいただいているミシンなのでしょう(幸せなミシンのようです)。

もちろん、送り歯は部品交換します。

内釜にもキズがありました。
写真で見るよりも、かなりキズが突起していたので、糸抜けのときにひっかかって縫い目にも影響があるかもしれません。
これは、研磨して処置します。

最後に試縫いをして完了です。
表面の細かなキズなどはどうにもできませんが、出来る限りきれいにしてお返しします。

現在、家庭用ミシンの主流はコンピューターミシンですが、電子ミシンが劣っているわけでは決してないと思います。
機種によってはパワーはむしろ電子ミシンの方が上だったり、故障したときの部品代が安価だったりと、メリットも数多くありますので、これからも末長く使っていただきたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。
このブログでは、ミシンを使う上でのちょっとしたヒントや、ミシン修理レポート、お知らせ、雑記などを不定期で載せております。
もしよかったら、他の記事も覗いてみてください。

<ご注意> 
この記事は、「ミシンの修理をおすすめするもの」ではありません。
経験のない方がミシンを分解するのは、非常にリスクが伴います。
軽はずみな分解をおこなったために、その後、修理不能となるケースがありますので、ご注意ください。